時間割に「総合」と書かれたコマがあります。国語や算数と違って教科書がなく、学校によってやっていることもさまざま。「総合の時間って、結局何をしているの?」は、保護者のみなさまからよく出る素朴な疑問だと思います。しかも高校に上がると、名前が「総合的な探究の時間」に変わる。近年の教育ニュースでは「探究」ということばを見ない日がないほどですが、その定義を確かめようとすると、意外と説明が見つかりません。

この記事では、前回の「学習指導要領の読み方」の続編として、「探究」とは何かを学習指導要領とその解説(一次資料)の文言だけで定義し、小・中学校の「総合的な学習の時間」と高校の「総合的な探究の時間」の違い──実は目標の文に仕掛けられた「語順の逆転」に核心があります──を整理します。

1. 「探究」とは何か──4つのプロセスの繰り返し

まず定義から。文部科学省の学習指導要領解説(総合的な学習の時間編)は、探究的な学習における子どもの学びの姿を、4つのプロセスの繰り返しとして描いています。

  1. 課題の設定──日常生活や社会に目を向けたときに湧き上がってくる疑問や関心に基づいて、自ら課題を見付ける
  2. 情報の収集──課題の解決に必要な情報を集める
  3. 整理・分析──集めた情報を整理し、分析して考える
  4. まとめ・表現──気付きや発見、自分の考えをまとめ、表現する

ポイントは、これが一周して終わりではないことです。解説は、まとめ・表現の先で「そこからまた新たな課題を見付け、更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく」と明記しています。同時に「①②③④の過程を固定的に捉える必要はない」とも書かれており、順番どおりに一巡させる形式ではなく、行き来しながららせん状に深まっていく学びの姿がイメージされています。

① 課題の設定 自ら課題を見付ける ② 情報の収集 必要な情報を集める ③ 整理・分析 整理し分析して考える ④ まとめ・表現 考えをまとめ表現する 新たな課題の発見 発展的に繰り返す ※4つの過程は固定的に捉える必要はない(順番は行き来してよい)
探究的な学習のプロセス(小学校学習指導要領〈平成29年告示〉解説 総合的な学習の時間編をもとに作成)

「調べ学習」との違いは? プロセスだけ見ると調べ学習に似ていますが、出発点が違います。テーマを与えられて情報を集めるのではなく、①の「課題の設定」──自分で問いを立てるところ──から学習に含まれているのが探究です。だからこそ、答えが一つに定まらない問いでも学びとして成立します。

2. 「総合的な学習の時間」とは──小3から中3までの「総合」

この探究のプロセスを軸にした時間が、小学3年生から中学3年生まで置かれている「総合的な学習の時間」です。現行の学習指導要領(平成29年告示)の目標は、次の一文で始まります。

探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。」
──小学校・中学校学習指導要領(平成29年告示)総合的な学習の時間 第1 目標(柱書き)

2つの特徴を押さえておきましょう。第一に「横断的・総合的」。国語で身に付けた読む力、算数で身に付けたデータの整理、社会で学んだ地域の知識──教科ごとに学んだ見方・考え方を教科の枠を越えて総動員する時間として設計されています。教科書がないのは手抜きではなく、地域や子どもの実態に合わせて各学校が内容を定める建て付けだからです。

第二に、目標の後半。探究のゴールが「課題の解決」で止まらず、「自己の生き方を考えていく」ことまで含まれています。地域の課題を調べて発表して終わり、ではなく、その過程で「自分はどう生きるか」に思いが至る──ここが総合的な学習の時間の独自性で、解説はこれを教科の見方・考え方を総合する働きと並ぶ、この時間に特有の「探究的な見方・考え方」と説明しています。

3. 高校で名前が変わる──「総合的な探究の時間」

高校に上がると、この時間は「総合的な探究の時間」という名前になります。これは現行改訂(平成30年告示)での変更で、それまでは高校も「総合的な学習の時間」でした。単なる言い換えではありません。改訂のもとになった平成28年12月の中央教育審議会答申を受けて、解説は変更の趣旨をこう説明しています──高校では、小・中学校における総合的な学習の時間の取組の成果を生かしつつ、より探究的な活動を重視する視点から位置付けを明確化し直した、と。

あわせて制度面では、総合的な探究の時間は全ての生徒に履修させるものとされ、卒業までの単位数は3〜6単位(特に必要がある場合は2単位まで減可)と定められています。「探究」は一部の進学校の特別プログラムではなく、すべての高校生が通る正課なのです。

4. 核心は「語順の逆転」──目標の文を並べて読む

では、「学習」と「探究」で中身は何が違うのか。前回の記事で「学習指導要領は目標の文言から読む」という方法を紹介しましたが、それをここで実践してみます。2つの目標の柱書きを並べると、違いが浮かび上がります。

 総合的な学習の時間(小・中)総合的な探究の時間(高校)
働かせるもの探究的な見方・考え方探究の見方・考え方
目標の中核よりよく課題を解決し自己の生き方を考えていく自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していく
課題との関係課題を解決することを通して、生き方を考える生き方を考えながら、課題を自ら発見する

お気づきでしょうか。「課題」と「生き方」の語順が逆転しています。小・中学校では、課題を解決する経験の先に「自己の生き方を考えていく」が置かれている。高校では「自己の在り方生き方を考えながら」が先に来て、そのうえで課題を「発見し」解決する。解説はこの違いを、小・中の総合が「課題を解決することで自己の生き方を考えていく学び」であるのに対し、高校の探究は「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し、解決していくような学び」だと説明しています。

かみくだくと、こうなります。小・中学校では、地域のごみ問題でも商店街の活性化でも、まず目の前の課題に取り組み、その経験を通して自分の生き方を考える。高校では順序が変わり、「自分はどう在りたいか・どう生きたいか」という問いが学びの中に入り込み、そこと切り離せない課題を自分で見付けることが求められる──進路や職業、学問分野の選択と探究が地続きになるのは、この設計のためです。「発見し」という動詞が高校側にだけ入っているのも同じ理由で、課題設定の比重が上がっているのです。

ポイント:「総合」と「探究」の違いは、名前ではなく目標の語順に書き込まれています。小・中は「課題→生き方」、高校は「生き方→課題の発見」。一文の構造の違いが、そのまま発達の段階の違いを表している──学習指導要領の文言がいかに彫琢されているかがよくわかる例です。

5. 教科にも広がる「探究」──古典探究・理数探究など

現行の高校学習指導要領では、「探究」は総合的な探究の時間だけのものではなくなりました。科目名に「探究」を含む科目が並んでいます。国語の「古典探究」、地理歴史の「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」、そして教科「理数」の「理数探究基礎」「理数探究」です。

教科の探究科目は、各教科の見方・考え方を深く働かせて探究する時間です。一方、総合的な探究の時間は教科の枠を越えて横断的に探究する時間で、両者は役割分担の関係にあります。時間割で「探究」の文字を見かけたら、教科の中の探究なのか、教科横断の総合的な探究の時間なのかを見分けると、学校のカリキュラムの設計意図が読み取りやすくなります。

6. 先生・保護者のみなさまの使いどころ

先生のみなさまへ──単元設計は「4つのプロセスの往還」から

総合の単元づくりで指導要領・解説に立ち返るなら、見どころは2つです。ひとつは4つのプロセスを固定的に扱わないこと。①→②→③→④を1回ずつ通過させる進行表ではなく、整理・分析から課題の設定に戻る、まとめの途中で情報収集をやり直す、といった往還を織り込んだ設計が、解説の描く探究の姿に合っています。もうひとつは課題の設定に時間をかけること。とくに高校は目標に「発見し」が入った分、問いを与えるのではなく問いを立てさせる場面の設計が単元の質を左右します。

保護者のみなさまへ──「答え」ではなく「問い」を聞く

総合や探究の話題が家庭で出たとき、いちばん設計に沿った関わり方は、成果物の出来ではなく「いま、どんな問いを追いかけているの?」と問いのほうを聞くことだと思います。探究の学びは「正解にたどり着いたか」ではなく、課題の設定から表現までのプロセス全体で捉えるものとして設計されているからです。また、高校の探究が「在り方生き方」と結び付いていることを知っておくと、探究のテーマ選びが進路の話と自然につながっていることも見えてきます。

7. 次期改訂で「総合」はどうなる?

最後に、いま審議中の次期学習指導要領の動きにも触れておきます。中央教育審議会の教育課程企画特別部会が令和7年(2025年)9月25日に公表した「論点整理」では、この時間の再編に関わる方向性が示されています。小学校では「総合的な学習の時間+情報の領域(仮称)」という枠組みが、中学校では「情報・技術科(仮称)」との関連整理が、高校では引き続き総合的な探究の時間で「自己の在り方生き方と一体不可分な課題」に取り組むことが挙げられ、各教科でも探究的な要素を持つ学習活動の充実が明記されました。

つまり「探究」の重みは次期改訂でさらに増す方向で議論が進んでいます。ただし、これらはあくまで論点整理段階の方向性で、答申(令和8年度中予定)・告示を経て変わる可能性があります。審議の行方は、近日開始予定の「次期学習指導要領ウォッチ」で追いかけていきます。

8. まとめ

探究とは、課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現の4つのプロセスを、新たな課題の発見へと発展的に繰り返していく学びです。過程は固定的に捉えず、自分で問いを立てるところから学習に含まれます。

小3〜中3の総合的な学習の時間は、教科横断で「よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていく」時間。教科書がないのは、各学校が地域や子どもの実態に合わせて内容を定める設計だからです。

高校の総合的な探究の時間(現行改訂で改称・全員必履修・3〜6単位)は、「自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していく」時間。「課題」と「生き方」の語順の逆転が両者の違いの核心です。

高校では古典探究・地理探究・日本史探究・世界史探究・理数探究(基礎)など、教科の探究科目も新設され、教科横断の総合的な探究の時間と役割分担しています。

次期改訂の論点整理では「総合的な学習の時間+情報の領域(仮称)」案など、探究の比重をさらに高める方向が示されています(答申は令和8年度中予定)。

ここでの整理や関わり方の提案は、あくまで一つの考え方です。総合・探究は学校ごとの設計の幅が大きい時間ですから、「うちの学校ではこう組んでいる」「家庭ではこんな聞き方をしている」──ご意見やアイデアがあれば、ぜひお問い合わせフォームからお寄せください(記事名は自動で入力されます)。

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主な参考資料(すべて一次資料)

  • 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編」(PDF
  • 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編」(PDF
  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」(PDF
  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」本文(PDF
  • 文部科学省「高等学校学習指導要領比較対照表【総合的な探究の時間】」(PDF
  • 中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(中教審第197号、平成28年12月21日)(mext.go.jp
  • 中央教育審議会 教育課程企画特別部会「論点整理」ポイント資料:詳細版(令和7年9月25日)(PDF
  • 文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」(mext.go.jp

※引用した目標の条文・解説の文言は、上記の文部科学省公表資料によります(2026年7月31日確認)。